音声作品の販売サイトとして業界イチの規模!そんなDLsiteの音声編集部員が紹介する、
シチュエーションボイスやボイスドラマの台本制作についてのまとめ記事でございます。
音声作品系の制作において根幹とも言える要素である台本。
アドリブ音声でもない限り、台本なしでは収録をすることができません。
ただ、この台本制作…自分で作るとなると意外と難しいですよね。
音声作品の台本を書いてみたいけど、漠然とよくわからない。
バイノーラル収録の際の指定の仕方がイマイチわからない。
台本、そもそもわからないところがわからない。
上記のことでお悩みの方、必見です!
この記事を読めば音声系作品における台本作りの基礎をいい感じに理解することができます。創作活動の一助になれればと思います。
それでは台本の世界に飛び込んでみましょう!
目次
音声作品の台本とはずばりこんな感じ
実際に使用した台本から一部抜粋したものを用意しました。
次に出る無料音声作品の台本の一部となります。リリースをお楽しみに!
見ていただくと、縦書きであることやセリフ部分の他にも何かがわちゃわちゃ書かれていることに気が付くかと思います。こう思った方、いらっしゃるのではないのでしょうか。
「割と単純な構成なんだな」「自分でも書けそうだな」
そうです!台本自体はこのようにとってもシンプルな感じでOKなのです!
台本を構成する各パーツについて軽く説明します。
①ト書き(とがき)
セリフ以外の部分となります。舞台の説明や演技指示、SE指定の文章は全てト書きとなります。
②位置指定
バイノーラル収録の場合、喋る位置を指定する必要があります。「3.バイノーラル収録用の台本制作について」にて解説を入れます。
③セリフ
根幹の部分です。喋ってもらいたいセリフを思いのままに書き連ねましょう。
台本を書く上でなるべく気を配った方が良い点について
前提として、台本の書き方にこれ!と言った正解はありません。ただ、いくつか押さえておくと良いポイントがあるため、それらを紹介します。
リスナーさん用の配慮
長いトラックになる場合はトラックを分けよう
あまりにも1トラックが長いと、聴きたい箇所までシークしづらくなってしまいます。そのため、1トラックあたり20分~30分ほどの時間配分にしておくとGoodです。
物の名称をはっきりと書こう
「それ」や「あれ」等の指示語は、リスナーさんが(何の事だろう?)と想像する作業が必要になりますので、困惑や疲弊を生みやすくなります。
そういった狙いがない限りは、物の名称を明記した方が、ストーリーを飲み込んでもらいやすくなります。
オウム返しを使うと効果的な場面&あまり使用をオススメしない場面について
使うと効果的な場面
(例)リスナー(聴き手)が、キャラの意表を突く言動をした場合
ト書き//ヒロイン:Aからのデートの誘いを「ぎっくり腰で歩けなくなったから…」と断る
A「え、ぎっくり腰で歩けなくなったから…って、何それ!?大丈夫なの!?」
解説:デートを「ぎっくり腰で歩けなくなった」というなかなか無い理由で断ってきた相手に対しての、驚きを的確に表現するために使用。
あまり使用をおススメしない場面
(例)無難な会話を展開する事にオウム返しを多用してしまうケース
ト書き//ヒロイン:「明日の朝ごはん何食べたい?」
A「明日の朝ごはん何食べたい?って?パンケーキかな~」
ト書き//ヒロイン:「甘いのとしょっぱいのどっちにしよう」
A「甘いのとしょっぱいのどっちか?甘いので!」
解説:オウム返しが多すぎて、会話のテンポが崩れてしまっています。
【改善例】
ト書き//ヒロイン:「明日の朝ごはん何食べたい?」
A「明日の朝ごはんは~、パンケーキ食べたい!」
ト書き//ヒロイン:「甘いのとしょっぱいのどっちにしよう」
A「ん~…しょっぱいのも好きだけど、明日は思いっきり甘くしようよ。今日買ってきた苺とか乗せてさぁ」
などにすると、オウム返しの違和感なく、内容を自然に伝える事ができます。
声優さん用の配慮
演技のイメージがしやすいこと
セリフの前に演技する時のイメージを記載すると、収録がスムーズに進みます。
(例)
「可愛らしく」
「かなり生意気に」
「低い声で言い聞かせるように」
「吐息多めで甘えるように」
こだわりがあるセリフの場合は共有しておいたほうがGoodです。
(声に出しても)読みやすいこと
以下のポイントを考慮して書くと喜ばれます!
- 句点、句読点が適切な位置に振ってある
- 難読であったり複数の読み方がある漢字にルビを振る
- ページとページの間にまたがっての文章を極力書かない(読み辛くなってしまうため)
- 適切な行間を空ける
おすすめなのが、完成した台本を実際に読み上げてみることです。
「なんか読み辛いな?」とか「もうちょっと言い回し変えた方が適切だな?」と、試行錯誤して完成した台本はきっと読みやすいものになっているはずです。
以上、台本制作の上で押さえておくとよいポイントでした!
バイノーラル収録用の台本制作について
バイノーラル収録の台本はセリフに加え、喋る位置等の指定も必要となります。台本例を元に解説していきます。
▼台本例
立ち位置と距離指定、および移動しながら喋ってもらう箇所も指定する
上の台本例では、正面中くらい→左隣近め→左隣囁きの順で移動しています。
「喋りながら」「呼吸しながら」移動してもらえると移動している感じが演出できます。
立ち位置について、DLsiteスタジオでは魔法陣と呼ばれる立ち位置の目安を記した絨毯を用意しております。
▼魔法陣
▼実際に敷いた時の写真
番号指定がない場合でも、「正面」や「右耳近く」といった指定があるとGoodです。
距離感に関しては、慣れないうちは「遠め・中くらい・近め・至近距離」等のアナログに指定することを推奨します。慣れてきたらデジタルに、センチ単位で指定するのも一つの手段としてありです。
厳密に〇〇cmと測るわけではありませんが、より細かい位置指定を伝えることができます。
台本によっては位置に加えて顔の向きも指定する
同じ向きだと台本によっては不自然に聞こえるシチュエーションもあるため、顔の向きを指定してみましょう。
上の台本例だと、13行目に「体を見渡すイメージで」と記載しております。
全身をチェックする描写なのに、左耳近辺だけで喋ってると少しだけ違和感があるかな?と思い追加しました。
以上、バイノーラル収録用の台本制作例でした。
台本の書式・ページ設定について
台本作成ツールについて
色々なアプリケーションがありますが、無料のものではLibreOffice、有料のものではMicrosoft Wordがおすすめです。
本記事ではOffice365のWordを用いて解説を進めていきたいと思います。また、有志の方が出されているテンプレートをダウンロードして使用するのもありです。その場合、使用許諾等を確認してから使用するようにしてください。
縦書き設定にしよう
[レイアウト]タブ→文字列の変更より「縦書き」を選択する。
台本は縦書きで作ることを推奨します。
ページ番号を挿入しよう
[挿入]タブ→ [ヘッダーとフッター]の「ページ番号」ボタンを押下し、ページの下部(フッター)に番号を振る。
現在のページと総ページ数が分かる「X/Yページ」で振るのがおすすめです!
行番号を挿入しよう
[レイアウト]タブ→[ページ設定]の「行番号」を押下し、「ページごとに振り直し」を選択する。
行番号は仕様上、表示が横になります。
ページ番号、行番号を振っておくと宅録/スタジオ収録の際、リテイク指示が出しやすくなります。
文字サイズ・フォントを変更しよう
個人的には11~14くらいを推奨します。フォントはぱっと見で見やすいものなら何でもいいですが、私はメイリオが好きです。
登場人物が複数いる場合のレイアウト案
登場人物が2人以上の時、下記のようにキャラ名とセリフの間に線を引くと見やすくなります。線を引かなくても台本としては十分成り立ちますが、より見やすくするための工夫となります!
このレイアウトにするには、
- Tab設定をいじる
- ヘッダー設定にてキャラとセリフの間に線を引く
以上の2点が必要となります。
①Tab設定について
この設定を行うと、キャラ名を入力した後にTabキーを押すことですぐにセリフ部分へ移動させることができるため時短に繋がり、かつインデントも整えることができます。
文字入力する際に右クリックし、「段落」を押下
タブ設定を押下
タブとリーダー画面にて、登場キャラの名前の幅に合わせて規定値を変更する。キャラ名が3文字~5文字くらいの場合は9字~10字くらいで大丈夫です。
変更後、OKを押して閉じる。
上記の設定を行うことで、名前を入力した後にタブを押すと
セリフ部分のインデントが自動で揃うため、見やすくかつ作りやすくなります。
2.ヘッダー設定にてキャラとセリフの間に線を引く
ヘッダー設定で引くことによって次ページ以降にもその設定が反映されます。
[挿入]タブのヘッダーよりヘッダーの編集を選択
ヘッダーとフッダーの設定画面に移行したら再び[挿入]を選択。
図形→線から直線を引くやつを選択し、キャラ名とセリフの間に線を引く。
図形の書式設定にて幅や色を変えることが可能。
設定が完了したら、[ヘッダーとフッタータブ]の[ヘッダーとフッターを閉じる]を押下して設定画面を閉じる。
[先頭ページのみ別指定]にチェックを入れることよって、1ページ目のみ
ヘッダーのレイアウトを変えることも可能。
お好みで調整してください。
まとめ
いかがでしたか。
音声作品の台本制作はとても楽しく、収録と同じくらいに作品を創ってる感がある作業です。ここで、私が台本制作をする時において、いつも心がけていることを共有させていただきます。
創作活動とは時に辛く、時に何やってるんだろう…となりがちなもので、
どうしても書けない期間もあるかと思います。ただ、それを乗り越えた暁には素晴らしい作品が誕生します。
ちょっとでもご興味を持たれた方々、ぜひ挑戦してみてほしいです!
新しい記事の更新情報やセミナーの開催予定についてはTwitterアカウントトリオくんをチェック!